いきなり名前呼びは失礼?高市首相の外交から学ぶ、失敗しない異文化コミュニケーション

最近、日本メディアで高市首相の外交シーンを目にする機会が増えていますね。積極的な外交姿勢を頼もしく感じている方も多いのではないでしょうか。

海外の首脳をファーストネームで呼んだり、ハグを交わしたりする姿は、日本人から見ると“グローバル”と感じられます。しかし実際には、そうした振る舞いがすべての国で歓迎されるとは限りません

今回は、筆者の海外経験をもとに、国ごとのコミュニケーションスタイルや距離感についてまとめてみました。海外在住者による一つの意見として参考にしていただければ幸いです。

日本人が考える「欧米流」は、本当に世界共通なのか?

握手をして挨拶を交わす人たち

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日本では、「海外」や「欧米人」に対して、

  • 初対面からオープンでフレンドリー
  • 誰でもファーストネームで呼び合う
  • 挨拶はハグやキスが当たり前

といったイメージで語られることが多いと思います。

それはおそらく、アメリカのカジュアルなビジネス文化や、ハリウッド映画・ドラマの世界を「グローバルスタンダード」と刷り込まれているからかもしれません。

確かにアメリカの西海岸などではその通りの場面も多いですが、世界のコミュニケーションスタイルはもっと多様で複雑です。

たとえば、西欧のビジネスや社交の場でいきなり、「Hey guys, what’s up?」のようなノリで挨拶をしてしまったら、相手は困惑するかもしれません。

実際には、国や地域、あるいは属する業界や階層、年齢によって、礼儀やマナー、パーソナルスペースに対する感覚はかなり違います。

いきなりファーストネームは失礼な場合も。国ごとに異なるマナー

欧米の人たちとコミュニケーションするとき、知っておきたいのが、「形式がフレンドリーであること」と「心理的距離が近いこと」は、決してイコールではないということです。

もちろん、「この国では絶対こう」という話ではなく、個人差もありますが、私が15年超の海外生活の中で感じた全体的な傾向としては、以下のようなものがあります。(ちなみに、相手の年齢層は主に30代以降の人たちです)

アメリカ

アメリカ人は誰に対しても気さくなイメージがありますが、公の場では結構コンサバティブです。初対面では、アイコンタクトを伴う力強い握手がお約束。ビジネスの初期段階では「Mr.」「Ms.」などの敬称にラストネーム(苗字)を添えて呼ぶのが基本です。

一方で、スタートアップや西海岸の企業などでは、親しみやすさを演出するために、初めからファーストネームで呼ぶこともあります。

ただ全体としては、相手から「Call me ○○」と言われてからファーストネームで呼ぶ方が無難です。初対面でそう言われることも多いですが、このステップを無視して、いきなりファーストネームで呼んだり、関係が薄い中でいきなりハグをしてしまうと、距離感がわからない人と思われてしまう可能性があります。

イギリス

同じ英語圏ですが、アメリカ的なテンションで接すると、「押しが強い」「教養がない」と受け取られてしまうことがあります。挨拶は握手が基本ですが、アメリカのように相手の手を粉砕せんばかりの力強さは必要ありません。「適度な力で、短く」が上品とされます。

アメリカと同様に、相手の許可を得てから名前で呼びます。また、Sir/Dame/Lord/Professor/Doctorといった称号や呼称を重んじる文化はありますが、日常会話ではそれほど形式ばらずに「Mr.」「Ms.」などでOKな場面も多いです。

ハグをするのは、親しい間柄や久々の再会時など。とは言え、ロンドンの若年層やグローバルな職場では、日本人がイメージするような挨拶代わりのカジュアルなハグも多いと感じます。

ドイツ

ドイツは、西欧の中でも比較的フォーマルな距離感を重んじる文化だと言えます。特にビジネスでは敬称(Herr / Frau)+苗字を使い、博士号などのタイトルを重視する傾向もあります。ただし、若い世代やベルリンなどの都市部では、カジュアルなコミュニケーションも増えています。

ドイツ語には親称の「Du(君)」と敬称の「Sie(あなた)」があり、相手から「Duで話そう」とか「もうSieはやめましょう」と言われることで、少し距離が近づいたと感じられます。友情が深まると帰り際にハグをすることが増え、一度その関係になれば、次からは会った時の挨拶もハグになることが多いです。

フランス

フランスでは、握手での挨拶が一般的です。エリートを自認している層ほど、いきなり距離を詰めることを嫌い、形式的な礼儀やマナーを重視しています。親しくない段階で、断りもなくファーストネームで呼んだり、過度にフレンドリーな態度を取ると、教養に欠けると受け取られることもあるため、注意したいポイントです。

また、挨拶では「Bonjour, Madame / Monsieur」のように敬称を添えます。親しい間柄では頬へのキス「ビズ(La Bise)」を行いますが、基本的には女性同士や男女間の習慣です。最近では非常に親しい間柄なら男性同士でも行いますが、初対面や公的な場での男性同士は、握手をするのが基本です。

スペイン

スペインはヨーロッパの中でも、心理的・物理的な距離感が近いコミュニケーションです。初対面でも敬語を使わず「君(Tú)」で話し始めることが多く、女性同士や男女間では初対面でも頬へのキスが標準です。

男性同士は基本的に握手やハグが一般的で、信頼が芽生えると「握手+肩を叩く」からすぐに「力強いハグ」をする感じです。物理的な接触を拒むと、冷たい人と思われることすらあるので、スペインでは積極的な態度で良いと思います。

イタリア

イタリアも比較的パーソナルスペースが狭く、情熱的なコミュニケーションを好む文化ですが、同時に礼儀や相手の立場を意識する側面もあります。初対面やビジネスの場では敬称(Lei)を使い、まずは苗字で呼び合うのが一般的です。

属性や個人差もありますが、賑やかでオープンでありながらも、実は相手の身だしなみや言葉遣い、マナーなどをしっかり見ている面もあります。一度「ファミリー」と認識されると、一気に距離が縮まることもありますが、そこに至るまでは、過度に馴れ馴れしくせず、礼儀正しくすることが大切です。

北欧(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、アイスランド)

最後に、現在私が住んでいる北欧についてです。北欧では、平等でフラットな社会構造を重視する文化的背景から、初対面でもファーストネームで呼び合うのが一般的です。相手が政治家、教授、医者、上司、年上の人であっても、敬称は使いません。

これはフレンドリーだからとか、距離感が近いからというわけでなく、「すべての人間は対等である」という民主主義的価値観に基づいています。また、アイスランドは苗字を持たない独自の文化があり、名前で呼び合うのが当たり前になっています。

挨拶は握手が基本です。過度なスキンシップはあまり行われませんが、友人関係になると男女問わずハグをすることは珍しくありません。ただし、ビジネス上の関係では、ハグよりも握手が一般的です。

形だけのグローバル演出よりも、自然な距離感を大切にしよう

私が海外で生活していて感じるのは、海外慣れしていると演出するよりも、自然体で向き合い、適切な距離感を見つけることの方がずっと大事だということです。

日本のメディアでは「海外ではフレンドリーが正解」のような意見が目立ちますが、実際には文化や文脈によって正解は違う、という前提を持っておくことが大切だと思います。

初対面からいきなりファーストネームで呼んだり、ハグをしたりするのは、相手や状況によっては「不躾」「馴れ馴れしい」という印象に繋がることがあります。「フレンドリーに振る舞わなきゃ」と無理をする必要はなく、普段通りの自分で接すれば十分です。

異なる文化圏だからこそ、一段階ずつ扉を開けていく慎重さが、結果として信頼に繋がるのだと感じています。

※本記事の内容は、筆者の実体験に基づく傾向をまとめたものであり、特定の国や文化のすべてを規定するものではありません。国や地域、コミュニティによってマナーや習慣は異なるため、一つのケーススタディとしてお読みください。

 

筆者プロフィール
THE STYLE OF NORTH編集部 AKARI
海外在住歴15年。北欧スウェーデンを拠点に、ヨーロッパ数か国での生活・ビジネス経験を持つ。本業はクリエイター。スウェーデンのヴェステルボッテンチーズ(Västerbottensost)が好き。

THE STYLE OF NORTH 編集部

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