<北欧で暮らす日本人>フィンランドで見つけた幸せのカタチ/カルットゥネン典子さんインタビュー

引き続き、フィンランド在住のカルットゥネン典子さんにインタビュー。サウナ文化やフィンランドデザイン、おすすめの観光スポットなどをお聞きしました。

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フィンランドのシンボルでもある白樺の木に囲まれた典子さんの自宅付近にて

ーーフィンランドには一つのものを長く愛用し、家族代々受け継ぐという文化もありますよね。
「もちろん新しいものをプレゼントする方もいらっしゃいますが、家族の歴史が詰まったものを大事に繋いでいくという価値観があると思います。これは私の職場であるミュージアムで実際にあった出来事ですが、おばあさんが『私が使っていたものを孫に譲りたいのだけど、これは誰の作品だったかしら?』と確認にいらしたり。『これはおばあちゃんがずっと使っていたお気に入りよ。今度はあなたが使ってね』と、家族にプレゼントするというお話も聞いたことがあります」

ーー祖母から孫へ。フィンランドらしい素敵なエピソードですね。
「そうですね。フィンランドでは陶器やガラスは危ないから子供には使わせないというのではなく『壊れやすいから大事に扱うのよ』と触れさせて教えていくんです。実際に触れることで、これは大事に扱わなければならない、丁寧に永く使わなければならないというのを学んでいくのだと思います」

ーーメイド・イン・フィンランドのプロダクトは日本でも人気がありますね。典子さんのお気に入りのブランドはありますか?
「仕事を通してイッタラ製品を深く知るようになり、実際に工場で職人さんたちが作っている姿も見ているので、やはりイッタラがお気に入りです。身近でその制作過程を見ていると、一つの製品ができるまでに多くの人の手が加わり、だからこそ素晴らしい製品が生まれるということが手に取るようにわかるんですね。

長い歴史のあるイッタラはフィンランド人にとっても非常に親しみのあるブランドで、『これ、おばあちゃんが使っていたわね』とか、『これは昔、サマーコテージで使っていたものだわ』というような人生の思い出が詰まっているんです。数あるブランドの中でも、イッタラは人々に愛され、昔からフィンランド人の生活に溶け込んでいるブランドだと思います」

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愛着のあるイッタラ製品に囲まれて

ーーフィンランドと言えば、デザインの他にサウナ文化も注目されています。
「そうですね。サウナの後に冷たい水に飛び込んだり、アイススイミングをしたりするのはフィンランド独特の入浴法ですよね。私が日本で体験したサウナは、長時間熱さに耐えて我慢の限界が来たら外に出るというスタイルでした。フィンランド人にとってのサウナは体を温めてリラックスするだけではなく、友人とおしゃべりを楽しむ社交の場でもあります」

ーーロウリュやヴィヒタといったフィンランド式サウナ入浴法も認知されてきました。典子さんも日常的に楽しんでいるのでしょうか?
「はい。フィンランドではほとんどの家庭にサウナがあり、私の主人や主人の友人たちは長い時には2時間以上もサウナの時間として楽しみます。私も主人の友人の奥さんと一緒に入ったりしますよ。おしゃべりをしながら出たり入ったりを繰り返していると、あっという間に時間が経ってしまうんです。リラックス効果が高いのはもちろん、そこから新しいコミュニケーションが生まれるんですよね。それもフィンランド式サウナで知ったことです」

※サウナ文化はフィンランドの文化として初めてユネスコ無形文化遺産に登録された。
※ロウリュ(Löyly):熱したサウナストーンに水をかけた時に発生する蒸気で発汗作用を促すフィンランド式入浴法。
※ヴィヒタ(Vihta):白樺の若い枝葉を束ねたもの。サウナ内に吊るして香りを楽しんだり、全身を叩くことで血行を促進したりする。

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フィンランドのサウナ内で使用されるヴィヒタ(参考写真)

ーーフィンランドの観光スポットについてお伺いします。日本人観光客が現地のライフスタイルを気軽に体験できるエリアはありますか? おすすめがあれば教えてください。
「私の地元ですが、ハメーンリンナ(Hämeenlinna)はおすすめのエリアです。日本の皆さんがフィンランドへ旅行する場合はヘルシンキやラップランドへ行かれることが多いと思いますが、ハメーンリンナにはハメ城や博物館、アウランコ国立公園などの見どころがありますし、湖畔には観光客でも宿泊できるサマーコテージがたくさんあります。ハメーンリンナはヘルシンキから電車で1時間ほどですので、ヘルシンキからの日帰り観光も可能です。私が勤めているイッタラのミュージアムやガラス工場へもさほど遠くなく、日本の皆さんにもぜひ訪れてほしいエリアです」

ーーハメーンリンナではどんな楽しみ方ができますか?
「日程が許すのであればサマーコテージを借りて2~3泊していただきたいですね。ヨーロッパからの観光客はサマーコテージに1~2週間滞在して、フィンランド式サウナや湖水浴、森の散策、釣り、きのこ狩りやベリー摘み、遺産巡りなどをしながら現地の生活を体験しています。そこまで長い滞在でなくても、ハメーンリンナでは自然の中でのんびり過ごしながらフィンランドのカルチャーやライフスタイルを楽しむことができますよ」

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13世紀にスウェーデン国王によって建てられたハメ城はハメーンリンナのランドマーク的存在

ーーいろいろなアクティビティが体験できるんですね。
「そうですね。多くのサマーコテージが湖のほとりにあるので、夏は日光浴やスイミングができますし、SUP(スタンドアップ・パドルボード)やカヌーも人気です。最近はファットバイクで森の中を散策する人も増えています。すべて地元でレンタルできるので手ぶらで大丈夫ですよ」

ーーフィンランドは日本からのアクセスも良いですよね。ヘルシンキ・ヴァンター国際空港にも日本語を話すフィンランド人スタッフが多いと感じます。
「はい。日本からの直行便もありますし、若い世代では日本の文化に興味を持って学校で日本語を勉強している人も増えているようです」

ーーそれはとてもうれしいことですね。

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美しい自然が広がる典子さんの自宅付近にて

ーー最後の質問になります。世界でもっとも幸せな国と言われるフィンランドですが、フィンランド人は何に幸せを感じているのでしょうか。現地で感じることを教えてください。
「根底には平和”があると思います。お互いを尊重し合える社会であり、家族、友人、自分自身が守られているということを無意識に感じられるからではないでしょうか。そして、人々が美しい自然と共存しながら生活していることもフィンランド人の幸せにとって大きな意味があると思います」

ーー自然とともに生き、思いやりのあるコミュニケーションを育む。忘れがちな当たり前の幸せに価値を見出すフィンランドの人々のライフスタイルには、ウェルビーイングを目指す現代人に必要な視点が詰まっているのかもしれません。本日は素敵なお話をありがとうございました。

新型コロナウイルス収束後は海外旅行へ行きたいと考えている人も多いのでは。パンデミック後、初めてのデスティネーションはリラックスやマインドフルネスにぴったりのフィンランドはいかがでしょうか。詳しい現地情報を知りたい方は、下記のウェブサイトをチェックしてください。
>> フィンランド公式トラベルガイド — VisitFinland.com
>> イッタラの周辺情報 Iittala Village

Photo by:Noriko Karttunen

THE STYLE OF NORTH 編集部

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